うのたろうです。
JASRACの裁判で東京高裁の判決がでました。
裁判の内容は日本音楽著作権協会(JASRAC)の契約方法が独占禁止法違反(私的独占)にあたるかどうかということ。
結果は以下のもの。
東京高裁はJASRACに対し「他事業者の参入を排除している」との判断をした決定をくだしました。ずいぶん遠まわりないい方ですが、これはいったいどういうことなのでしょうか?
わかりやすく見てみましょう……
SPONSORED LINKJASRACとは?
日本音楽著作権協会。各アーティストが自身の曲の管理をまかせることができる唯一の会社。放送むけ音楽の著作権管理事業をほぼ独占している会社といえばわかりやすいでしょうか。
よくテレビ番組のBGMで音楽が流れたりしていると思います。そういった楽曲はすべてJASRACが管理していて、テレビ局はJASRACに対しお金を払っているという形になります。もちろんそのなかから各アーティストに対し楽曲の使用料が支払われるという形になります。では……
JASRACが受けとっている金額は?
これは定額制と考えるとわかりやすいです。具体的な数字としては放送事業収入の1.5%。テレビ局やラジオ局はJASRACに対しこの金額を支払うことにより、JASRACが管理している約300万件の楽曲を自由に使えるという形になるのです。
これを包括契約(ほうかつけいやく)というのですが、ひとことでいえば定額制でダウンロードし放題といったニュアンスに近い契約方法です。ちなみに……
各アーティストへの分配は?
これはちょっとややこしいうえ不公平な形です。
といいますのも包括契約では、かけた曲のチェックや申請がおこなわれません。「定額制DLし放題=包括契約」では、誰がどこでどれだけその曲をかけられたかなんて把握するのは不可能だからです。
しかし、そこで困ってしまうのが実際の使用料の配分についてです。把握できないものをどうやって個々に数値化して各アーティストに分配するか?
この分配はCDの売り上げなどを参考にして決められます。しかし、そうなると損をしてしまうのは、フュージョンやサントラなどのインスト系の曲をつくっている人たちです。
テレビのBGMを思いだしてみてください。歌がついている流行りの曲よりもインストメンタルの曲のほうが圧倒的に多く流れていませんか?
このようにインスト系の楽曲は、その使い勝手の良さからいろんな番組でBGMとして使われまくっています。しかし、こういったCDがAKBや嵐などとくらべてずっと売りあげが少ないのが周知の事実です。
使いやすいから使われまくるけどCDが売れていないから分配が少ない――包括契約ではこういった不公平もでてしまっているのです。ちなみに……
今回の東京高裁に至るまでの流れは?
今回の裁判の始まりは?
2009年のことです。公正取引委員会(公取委)は、JASRACのやり方が独禁法違反にあたるとして排除措置命令をだしていました。しかしJASRACは「そんなことない」と、それに対し不服申し立てをします。その不服申し立ては公取委に認められ、2012年には命令を取り消す審決がだされました。
しかし、その結果に疑問を持ったのが、競合する著作権管理会社「イーライセンス」(東京)。イーライセンスはこの審決を不服として提訴しました。
形としては「公取委の決定」VS「イーライセンスのいいぶん」という形です。
その結果……
2013年11月の判決で東京高裁は「他の事業者を排除する効果がある」ということを認めました。そして公取委の審決を取り消しこう述べます。
「公取委は改めて当否を判断すべきだ」
そういった流れがあり公取委側が最高裁に上告し、この件が争われていました。その結果が今回のもの。「JASRACは他事業者の参入を排除している」では……
今後の流れは?
今後は公取委があらためてJASRACが放送事業者と結んでいる包括契約について考えることになります。つまり、JASRACが本当に独禁法違反の他要件を満たすかどうかということを審判しなおすということです。
その結果がどうなるかは、現時点では正直まだわかりません。しかし今回の判決は最高裁がくだしたものです。そのためこれ以上の裁判はできないだろうと思われます。
では、この結果が一般のわれわれにとってどのような影響をもたらすのでしょうか。見ていきましょう。
JASRACが包括契約ができなくなった場合どうなるのか?
①テレビ局やラジオ局の手間が増えます。
といいますのも、BGMなどに音楽を使う場合「これははたして自分のところで契約してる曲なのか」ということを一曲一曲確認しなきゃいけなくなるからです。
②料金形態が変化します。
包括契約ならば放送事業収入の1.5%が使用料として決められていましたが、それが崩壊することにより各曲ごとにお金が発生するようになります。そうすると「定額制でまとめ買い」をしていたものが「一曲ずつの販売」になるため料金形態が変わってしまうのです。
結果的に著作権使用料が値上がりするのか、値下がりするのかは競合組織との価格競争なども関係してくるので一概にはいえませんが「包括契約にくらべ手間が増える」ということだけは間違いありません。
まとめ
以上のことからもわかるように、包括契約というシステムが崩壊したとしても基本われわれ一般人にはあまり関係がありません。少なくとも直接的にはね。しかしJASRACに似た組織が強くなり、それによっていろいろな競争がおこなわれれば、末端であるリスナーのわれわれにも間接的になにか良いことがあるかもしれません。
そういったことが今回の東京高裁の判決なのです。
以上、うのたろうでした。